my little underground

世を儚む地下生活者が珍文・奇文の類いを日々量産しています

特別展「雪村 ~奇想の誕生~」@東京藝術大学大学美術館を観る

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以前、河鍋暁斎記念美術館へ行った時に見掛けたチラシで開催を知り、「奇想の誕生」なんてサブタイトル付けられたら行かないワケにはいくまいってなもんで上野公園の最奥の地、藝大美術館へ行って来ましたよ。

 

雪村。メインビジュアルにもあるようにゆきむらではなくせっそん。雪村周継がお名前ですな。当然アタクシ何も知りませんで、戦国時代の人で後のシーンに多大なる影響を残した奇想の人…程度の知識を詰め込んで現地に臨んでみましたが、まあ確かにコレは面白い。メインビジュアルにも使われてる「呂洞賓図」や「琴高仙人・群仙図」は言うに及ばず、他にも明らかなやり過ぎテイスト溢れる作品のオンパレード。いちいち細かい表情のおかしみから「その構図はどうなの?」とツッコまざるを得ないようなモノまで多種多彩。とは言えちょいちょい挟まる明らかにフツーの作品もあって、どうやらコレは当時のパトロンに「こういうの一つよろしく」と言われて描いた作品っぽい。芸術家が食っていくのって昔から大変なのね。

 

あと全然知らなかったのが尾形光琳との関係。勿論別の時代の人なので面識はなかったんだろうけど、光琳は雪村に相当影響を受けたらしく模写やら丸パクっぽい作品を結構残してるとのこと。そのワナビーっぷりにちょっと笑うものの、展示されてる光琳の作品からは雪村とは異なる上品さみたいなものが感じられて、もうちょっと針が振り切れるほどの影響を受けてたら後のシーンも相当異なる様相を見せたんだろうなあとか、琳派が存在しない歴史もあり得たのかもなんていう妄想がムクムクと。いや、でも急に雪村みたいな作品見せられたらガツーンとヤラれて然るべきだよなあ。

 

前期展示の作品の中に幾つか見たい作品があってそれを見逃しちゃったのは大失敗(行ったのは後期展示の期間中だったのだ)でもそれを補って余りある素晴らしい展覧会でした。最高。

 

sesson2017.jp

もっと知りたい雪村 ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたい雪村 ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

 

 

ミュシャ展@国立新美術館を観る

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みんな大好きアルフォンス・ミュシャ。でもチェコ語の発音に合わせるとミュシャじゃなくてムハらしい。途端に失われるオシャレ感。とっとこムハ太郎。まあそういうことはどうでもいいのだ。

 

今回のミュシャ展の目玉であるらしい「スラヴ叙事詩」という作品、チェコの国外で見られるのは初めてのことらしい。例によって薄らボンヤリとした知識しか持ち合わせていないけど、まあ気になるので好奇心の赴くままに六本木に行ってきたのであります。

 

国立新美術館初訪問。デカいすねえ。同時に開催されていた草間彌生展に合わせて館の周囲の木々に水玉があしらわれていた。カワイイ。同時に開催できるくらいだから施設自体が相当にデカい。全体を使った展示なんてしたら一日掛かっても見終わらないような気さえしてくる。

 

で、展示。「スラヴ叙事詩」がデカい。デカ過ぎる。圧倒的。その時点で「なんじゃこりゃ」の嵐。気を取り直してじっくり観ようとするも情報量多くて頭の回転が追いつかない。コレはトンデモナイ代物ですなあ。フワッとした印象だけども、ポップな作品を連発して絶大なる人気を得ていた人が突然民族意識に目覚めて感情が爆発した挙句のコレ。単純に既存の作品のファンからしたらコレ見せられても「おお…」くらいしか言えなかったんじゃないかなあ。後の展示で制作背景を説明した映像があったけど、作風がオールドスクール過ぎて(世は正にキュビズムやらロシア構成主義のど真ん中)あまり受け入れられず、結果長くしまい込まれていたというのもちょっと納得。故に幻の大作という扱われ方だったらしい。展示されて人の目に触れられるようになったのも割と最近の話とのこと。確かにこんなデカい作品、常設で置ける場所も限られるしねえ。

 

確かにポップでオシャレでカワイイ感じとは程遠いものの、封じ込めていた思いを巨大なキャンバスに叩きつけたこの一連の作品、アタクシはむしろ一気に引き込まれてしまった。基本的に明るい画面の作品は少なく、暗く陰鬱な印象を湛えた作品が多いけど、そんな中で大抵一箇所だけスポットのように明るい光が当たる場所があるというのもつらい時期の長かったスラヴ民族の一瞬の希望のようなものを表現しているんでしょうなあ(テキトー)みんながひたすらパクりまくってるミュシャの作風とはだいぶ違うけど、見てる内に「この辺の感じ、山田章博じゃん!」とか「ナウシカ描いてた頃の宮﨑駿っぽいなあ」みたいな発見も多々あって飽きない飽きない。「みんな大好き」方面のミュシャ作品も後半に展示されているので、尚更二面性が感じられてお得感満載。「スラヴ叙事詩」は巨大が故に多少の混雑でも結構見易いという意外な利点(?)もあり。春の陽気に誘われて六本木にお出かけってのもイイと思いまっせ。オススメです。

 

www.mucha2017.jp

 

ミュシャ展

ミュシャ展

 

 

 

The Stone Roses@日本武道館を観る

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イヤ、もうなんかスゲー良かったっす。終わり。

 

…ってことでもうイイってくらい良かった。それだとまあナンなので、とりあえず色々と書く。

 

4人揃ったローゼス。なんかそれだけで色々と感慨深い。前日になって「まだ来日してないんじゃないか」みたいな情報をTwitterで目にして「またか…でもあり得る」みたいな気分になる程度にはよく訓練されたファンであるアタクシ。イアン・マッカロクの件が直近であったからねえ。

rocketnews24.com

 

その上でゾロゾロと武道館のステージ上に4人が現れて、マニが「I wanna be adored」のイントロを弾き始めた瞬間、「アウアウアー」みたいな曰く表現し難い感情が溢れて困っちゃう。ここからは断片的な記憶。

 

レニのドラム、やっぱスゲえ。そしてコーラスワーク。「実はストーンローゼズとはレニのことだったんじゃないの」疑惑。最初は「服部半蔵 影の軍団」みたいな忍者っぽいマスクを被ってたんだけど、「Waterfall」くらいであのトレードマーク的ハットを被ってプレイしてたのでソレだけでブチ上がる。嗚呼、あのレニが今ローゼズでドラムを叩いている…前回のライブでは観られなかった夢の光景ですわ。ちょっと泣く。

 

ジョン、髪長いっすね。そして着てるスカジャンがめっちゃカッコいい。ああいうの欲しい。ブラックとゴールドのレスポールを交互に使ってたけど、個人的にはヘヴィ過ぎてもうちょっと繊細さが欲しいかな…と思う瞬間がちょっとだけあった。それでも90年代最重要ギタリストの一人だと思わせるのに十分過ぎる貫禄のプレイでございました。

 

マニ、アンプの前からほぼ不動でゴリゴリとピック弾き。たまにスクリーンに抜かれる笑顔が堪りませんなあ。しかし、あれだけ印象的なフレーズが山盛りであるにも関わらず「ここぞ!」という時に抜かれないのは如何なものか。映像担当のスタッフには猛省を促したい。とは言えちょっと「あれ?」と思うほど不動だったことも事実。体調もしくは体力的に何かしらの問題を抱えていたのだろうか。ちょっと心配。

 

イアン、声出てる!終始安定してるじゃないか!心配して損した。と思ったら「She bangs the drums」と「I am the resurrection」で完全に音を見失う状況が発生。と同時にアタクシもガラガラガッシャーンとなる。おそらくあの場にいた全員が「なしてこの超絶名曲でやらかすかね???」と思ったに違いない。でもそこがイアンのいいところ、ということにしておきたい。あと、ギターソロ中とかヴォーカルとしての仕事をしてない時に見せる動きが謎かつキュート。これは現場に行かないと気づかない類のヤツだ。どうもいいが「肩ガ痛イ」という日本語を教えたのは一体誰なんだ?

 

セットリストは半年前のものとほぼ同一。アンコール無しでスパッと立ち去るのはちょいと寂しい気分もするけど、コレはコレでありだとも思う。あと、ふと気づくと他のライブより客席が明るく感じる瞬間が多かったような気が。これは意図的なものか単なるアタクシの気のせいか分かりませんが、20年以上も前に「オーディエンスが主役」と広言していたバンドのライブならあり得なくも無い…なんてことをちょっと思ったりしましたが多分アタクシの妄想でしょう。

 

ともかく、95年の武道館の2階席にいたボンクラ学生のアタクシのカタキを22年の時を越えて取ったような、そんな素敵な夜でございました。

 

 

 

大英自然史博物館展@国立科学博物館を観る

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学生も最後の年、卒論の提出も終わって日がな一日全力でボケッとしつつ「嗚呼、こんな贅沢な時間の使い方はもう一生出来ないのだなあ」などと虚空に向かってつぶやきつつ、さめざめと泣くような生活をしていたアタクシ(後にこの考えが間違いであることに気付くことになるが、それはまた別のハナシ) そんなアタクシの目に余る堕落っぷりに見かねたファーザーが一言「カネは出してやるからどっか海外にでも行ってこい」

 

今考えるとまだ日本は豊かだったのだなあ、などという感慨も湧くところではありますが、それはさておきボンクラ青年であったアタクシ、この話に全力で乗っかりましてロンドンへぶらり1週間の一人旅に出かけたのでありました。ろくすっぽ英語も話せないくせに初めての海外を独りでってのも中々のチャレンジャーだったのだなあ我ながら。まあそんなこんなでロンドンのあちこちを探索したのは今でもいい思い出なのですが、その時に行ってたんですわ >大英自然史博物館 展示内容はあんまり覚えてないんだけど、異様に風格のある建物とおそらく遠足か何かであろう大量の小学生(多分)に囲まれて展示を見て歩いたのは記憶にあったりするのです。

 

というワケで、再び東京で貴重な展示物が見られるならこれ幸い、と行って参りました国立科学博物館

 

元々、恐竜の化石とかそんなモノを見るのは好きなもんで、大した前知識もなくふらりと行って参りましたが、そんなボンヤリメンでも十分以上に楽しめる内容でございましたよ。メインビジュアルにも使われている始祖鳥の化石なんて間近でじっくり見られるし。解説によると頭部の化石はないと思われていたのが最近のCTスキャンによって内部に埋没していることが判明。そこから脳の容積が分かって生態の研究が更に進んだとか。ちゃんと保存しておくと科学の進化でさらなる知見が引き出されるようになるなんて、めっちゃイイ話ですなあ。

 

ちょうど最近、学芸員に関する話題が世を賑わせておりましたが、ああいう発言・考え方をする人って実際に館に足を運んでいるのかね? 少なくとも東京近郊のその手の施設なんてドコも本当に面白い企画展やってるし。アタクシなんか何処に行こうかスケジュールの捻出に四苦八苦して嬉しい悲鳴を上げるレベルなんですけど。ウキャー。本来の業務であろう保存やら教育という仕事をやりつつ、きっちり啓蒙と言うかエンタテインメントの方面にも昇華させている皆様に最敬礼。

 

とは言え、そういった所に落ちる予算が異常に少ないのもまた事実でありまして。いい仕事をしてる人は正当な評価を受けてニコニコして欲しいなあと思うわけであります。だからアタクシは積極的に美術館/博物館に足を運び続ける所存でありますよ。

 

ちょっとズレましたが刺激的で脳みその血流が促進されること請け合いの展覧会なので、みんなも行こうぜ科博。6/15までだから忘れるなよー!

 

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科博限定の測量野帳もゲットだぜ!

 

 

treasures2017.jp