my little underground

世を儚む地下生活者が珍文・奇文の類いを日々量産しています

舞台『イヌの日』@ザ・スズナリを観る

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阿佐ヶ谷スパイダース長塚圭史脚本・松居大悟演出の舞台、傑作のウワサをキャッチしたので観てきた。

 

http://inunohi.wixsite.com/2016

高校を卒業後、進学も就職もせずに悪友たちと遊び暮らす広瀬幸司。ある夏の始め、仲間の1人である中津正行からある仕事を頼まれる。それは、中津が留守にする間、「ある人たち」の面倒を見てくれというものだった。大金に釣られ安請け合いした広瀬だが、その「ある人たち」とは恐るべき状況下にある者たちだった…。 

 

15年間、防空壕跡に監禁されてきた人と監禁してきた人、そこに巻き込まれた人、自ら監禁されることを望む人…

 

そもそも外の世界と防空壕の中に違いはあるのか。「外は地獄だけど、言う程地獄じゃない」というセリフがあったけど、僕には防空壕の中だって「地獄であって地獄じゃない」と思える。違うのは関わらざるを得ない人の数?規模? でもそれだって一歩退いて俯瞰で見れば誤差の範囲みたいなものだ。つまり我々は地獄のような世界で生きていかざるを得ないってことなのか。さすがにそれはペシミズムに過ぎるだろうか。

 

そもそも映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」で語られたように地獄にだって生き生きとした生(若干のゲシュタルト崩壊が発生…)は存在するし、むしろ天国の方が生き辛そうな印象だった。(それはまた映画「かぐや姫の物語」で語られたテーマと符合するものだと思っている)僕には防空壕の世界に留まる選択をした5人に羨望の感情を抱きつつ、結局最後には選択を放棄して流されるままただ泣くだけの広瀬に感情移入してしまうのだ。

 

書いててよく分からなくなってきたが、つまりまた帰り道で色々考え過ぎちゃうようなお芝居に出会えて本当に幸せだ、ということが少しでも伝わってるとちょっと嬉しい。