my little underground

世を儚む地下生活者が珍文・奇文の類いを日々量産しています

佐藤亜紀「スウィングしなけりゃ意味がない」を読む

www.kadokawa.co.jp

 1939年ナチス政権下のドイツ、ハンブルク。軍需会社経営者である父を持つ15歳の少年エディは享楽的な毎日を送っていた。戦争に行く気はないし、兵役を逃れる手段もある。ブルジョワと呼ばれるエディと仲間たちが夢中なのは、”スウィング(ジャズ)”だ。敵性音楽だが、なじみのカフェに行けば、お望みの音に浸ることができる。ここでは歌い踊り、全身が痺れるような音と、天才的な即興に驚嘆することがすべて。ゲシュタポの手入れからの脱走もお手のものだ。だが、そんな永遠に思える日々にも戦争が不穏な影を色濃く落としはじめた……。

 

 これは1940年代のハンブルグの話なのか、それとも近未来の日本の話なのか…

 

遠くから巨大な何かがゆっくりとやってくる。巨大なそれは、間違いなく自分たちを完璧なまでに轢き殺していくだろう。それに抗うことはもう絶対に不可能だ。でも、それがやってくるまでにはもう少し猶予がある。その猶予の間、何をする?

 

この小説に通底する「醒めつつ熱狂している」みたいな感覚、すごく良いと思う。この感覚を「諦め」と表現する人もいるのかもしれないけど、個人的にはちょっとそこには違いがあるんじゃないかと思う…んだけど、上手く言語化できない。

 

最近、SNS上で色んな意見を見る度に「どうしてそんなに極端な方へ針が振れてしまうんだろう」と思うことが多い。それってざっくり言ってしまえば、今の空気が「躁」な方向にあるってことなんだと思う。どうして「躁」になるのか。アタクシはそこに、巨大な何かの影を幻視する。その影にビビりながら、さてどうする?SNS上で八百万通りの正義を振りかざして何かをした気になる?OK、それも一つの選択だ。choice is yours。

 

アタクシは…そうだな、どうしようか。少なくとも考えるのを止めるのはやめておくよ。

 

 

…なんていう妄想が捗るすごく面白い小説です。マジオススメ。やや強引だけど、片渕須直監督の映画「この世界の片隅に」にも通じる点があるようにも読める。やっぱ戦争イクナイ。読み終えてふと思い出したのはスマパンのこの曲のことでした。

 


The Smashing Pumpkins - 1979

 

「醒めつつ熱狂する」という感覚を見事なまでに具現化してるとアタクシ思うちょります。

 

纏まらないけど、この本を読んだ後の気分はこんな感じです。

スウィングしなけりゃ意味がない

スウィングしなけりゃ意味がない