ブリューゲル「バベルの塔」展@東京都美術館を観る
国芳も暁斎もイイし、先日観に行った雪村もカッコいい。こうなって来ると東の奇想を観てるんだからやっぱり観たくなるじゃないですか、西の奇想も。というワケで行ってきました上野公園。最近よく来てるなあ。
西の奇想といえばやはりヒエロニムス・ボスとブリューゲルでしょう!なんてことを知ってるワケもなく、例によって知識はほぼゼロ。こんなイカれた絵画を残した人たちがいたんですねえ。ちょいとWikipediaで調べてみると
ほとんどの作品が16世紀の宗教改革運動での偶像破壊のあおりを受けて紛失し、現在はわずか30点ほどの作品が残されているのみである。
…ですよね~(^_^;) そりゃ真面目な人は怒るだろうなあ。
でもブリューゲルのバベルの塔は教科書で見たことあるし、ボスのこういう話とか見るとやっぱり気になるじゃないですか。で、実際に展示を観ていくと奇想というか、ぶっちゃけ溢れる気持ち悪い感じには中々堪らんものがありますな。完全なる偏見だけど、キリスト教の宗教画って仮に幸福な場面を描いたモノでもなんだか怖いんですよ、個人的に。いわんや地獄をやってなもんですよ。その上に足の生えた魚とか胴体のない人間とかヘンテコのオンパレードを見てると、この気持ち悪さがクセになる人が世界規模で結構な数いるってのも理解できるというもの。
その影響下にあり、元々風景画も得意として「農民画家」なんて呼ばれてたブリューゲルが手がけた銅版画の一群は、ヘンな生き物が描かれていなくてもなんだか不穏に感じられてグイグイ引き込まれちゃいましたよ。そして真打ち「バベルの塔」意外と絵のサイズ自体は小さいんだけど、描き込み具合がハンパない。イタリア旅行で見たコロッセオをベースにしたというのは成る程なあと。神の怒りを買った場面を描いたのではなく「聖書に載っとるバベルの塔っちゅーたらもんが実際あったらこんな感じやないやろか(カキカキ」というものを叩きつけた感の方を全然強く感じる。じゃないとレンガやら漆喰を荷揚げする滑車とかそういうテクノロジー部分をチマチマ描き込まないでしょ。画面右手下部には船着き場があって、ここから資材を運び込んでるんだなあとか、塔の最上部の建築中の部分にはきっちり足場が組まれているし。(今回観るまでは勝手にあの辺は神の怒りで崩された残骸なんだと思ってた)
これは最近のモリナガ・ヨウ氏の仕事に通じるような巨大プロジェクト(架空だけど)の記録集の趣きあり。宗教画とか神がどうの、というよりも「人間もなかなかやるのだぜ?」というプライドの発露。これがルネサンスか!(←てきとー)
実際見に行かなかったらこういったことには思い至らなかったし、足を運んで正解だったっすわ。
展覧会の公式マスコット「タラ夫」怖いよ…