フレドリック・ブラウン『天の光はすべて星』を読む
世間が宇宙に感心を持たなくなった時代、それでも宇宙への夢を捨てきれない元宇宙飛行士が木製探査計画をぶちあげた女性議員を応援しながら自身の夢を取り戻していく…みたいなお話。
渋い。派手さは確かにない。でも沁みる。この本を若い頃ではなく、おっさんになった今読むことが出来た幸運に感謝。昔だったら「なんか地味な話だなあ」くらいの感想しか抱けなかったと思うが、今なら主人公マックスの気持ちがよく分かるし、この感覚は今の僕にも有る。
物語としてはとてもビターな結末を迎えることになるんだけど、それでもラストカットの光景は本当に素晴らしい。この夢の様な光景を思い浮かべながら考えることがある。
僕は「何者にもなれなかった」という後悔みたいな思いが心に浮かんでは消える…という日々が突然やって来たりすることがある。昔はそれがすごく辛かったような気がするんだけど、最近はそうでもなくて「確かに何者にもなれなかったが、それでもそういう人生だってそれなりに素晴らしいし、何かには貢献してたりするんじゃないの?」という思いが心の議会多数派を占めるようになってきた。(おかげで心の平穏は保たれているというワケだ)
主人公マックスは結局のところ歴史の表舞台に立つことはなく「何者にもなれなかった」のかもしれない。それでもそこには「木星探査」という人類の夢の礎となったモノが確かに存在する。「多様性」なんていうとちょっと硬いけど、人生ってそんなものだと思っていたい。みんな違ってみんないい、なんて思っていたい。この本を読むと、そんな考えを肯定してくれているようでなんだかとても嬉しくなってしまうのだ。
ただ、そのためには瞳の中に”星屑”の輝きを灯し続けなければならないんだ…なんてことをつらつら考えるアタクシなのです。